ヘリコバクターピロリ菌

ヘリコバクターピロリ菌とは

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌/H.pylori)は胃粘液の中で生息する細菌です。感染経路はまだはっきりと解明されていませんが、免疫力が弱く胃酸もまだ強くない幼少期に口から感染すると考えられています。
強い酸性の胃酸は食物の消化だけでなく、殺菌という役割も担っています。そのため、以前は胃に生息できる細菌はいないと考えられていましたが、ピロリ菌は強いアルカリ性を持ったアンモニアなどを作り出し、胃酸を中和することで胃の中に生息していることが近年になって明らかにされました。ピロリ菌が出すこうした物質の影響により、胃粘膜が傷付き、繰り返し潰瘍を生じさせます。

ヘリコバクターピロリ菌と胃がん

ピロリ菌感染によって胃粘膜の炎症が長期間続くと胃粘膜が萎縮を起こして胃がんリスクを大幅に上昇させます。萎縮性胃炎は、胃粘膜が腸の細胞に変化する腸上皮化生を起こし、これが胃がんにつながるとされています。ヒトからヒトへの感染があるため、ご家族が感染していたり胃がんになった方がいる場合、ピロリ菌に感染している可能性が高くなります。

検査方法

胃カメラを用いた検査
  • 迅速ウレアーゼ試験
  • 鏡検法(組織の標本を顕微鏡で調べてピロリ菌の有無を調べます)
  • 培養法(採取した粘膜組織を培養してピロリ菌が生えてくるかを調べます)
胃カメラを使わない検査
  • 抗体測定(採血もしくは検尿など)
  • 尿素呼気試験
  • 検便による便中ピロリ菌抗原検出法

除菌治療について

除菌治療では、2種類の抗生剤とプロトンポンプ阻害剤である胃酸分泌抑制剤を1週間服用します。初回治療で用いる抗生剤は、アモキシシリンとクラリスロマイシンです。除菌治療は初回の成功率が80%前後とされています。ただし、初回治療で失敗した場合には薬剤を変更して2回目の除菌治療を行います。2回目の除菌治療で約90%が除菌に成功するとされています。除菌治療の成功判定は正確に調べるために服用終了から1ヶ月以上経過してから行います。また、薬剤アレルギーで初回治療で用いる薬剤が使えない場合も他の抗生剤を用いた治療が可能です。

 

健康保険の適用について

ピロリ菌感染検査や除菌治療を健康保険適用で受ける場合には、消化性潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少症、早期胃がん内視鏡治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ菌感染による慢性胃炎があるなどの条件があります。また、慢性胃炎の場合、内視鏡検査で胃炎があることが確認される必要があります。内視鏡検査で胃炎を確認し、検査でピロリ菌の存在が確認されれば健康保険が適用されます。バリウム検査で胃炎が確認できても内視鏡検査を受けなければ保険適用されないためご注意ください。